医療分野における内視鏡、マイクロサージャリー等の進歩に極細金属細管の製造技術は必須である。 我々は、現在内径20μm、外径50μmのステンレスチューブの医療分野での利用を検討している。赤血球2-3個が通り抜ける細さである。チューブ状では画像解析が難しいため、昨年度はシリコンの単結晶基板で作られた測定チップでスリットを形成し、その流動特性を画像解析、検討した。スリット幅は横5-10μm、深さ4.5μmになっている。 実験では、成人46人を対象に採血した100μlの血液が測定用チップ内を流れるのに要する時間を測定し、画像解析を行った。画像解析の結果、血液のスリット通過時間に大きな影響を与えているのは、シリコンチップへの血小板の粘着、凝集能であると考えられた。したがって、極細金属細管の医療分野への利用には、血小板への反応牲を軽減する処置が重要であると考えられた。今年度は、ステンレスなど極細金属細管の材料を血液流路にはめ込み血液反応を画像解析する予定である。 また、昨年度は他の検査(年齢、男女比、血球データ、生化学データ)とシリコンチップスリットの血液通過時間との相関も合わせて検討した。相関関係を調べるために測定したデータは以下の通りである。年齢、男女比、中性脂肪、総コレステロール、HDLコレステロール、LDLコレステロール、血糖値、腎機能(BUN、クレアチニン)、肝機能(総ビリルビン、GOT、GPT、ALP、γGTP)、白血球数、白血球分画(好中球、好酸球、好塩基球、単球)、赤血球数、血小板数である。 年齢との相関は高齢になるにつれ、血液通過時間が長くなっていく傾向はあったものの統計的に有意差は無かった。他の検査データとの相関は認められなかった。したがって、健康診断で行われている一般血液学検査で血液の流動性を予測することは危険であると思われた。
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