医療分野における内視鏡、マイクロサージャリー等の進歩に極細金属細管の製造技術は必須である。 前々年度はシリコンの単結晶基板で作られた測定チップでスリットを形成し、血液流動特性を画像解析、検討した。スリット幅は横5-10μm、深さ10μmである。その結果、血液のスリット通過性は、血小板のシリコンチップへの粘着性、凝集性に依存しているものと考えられた。したがって、極細金属細管の医療分野への利用には、血小板への反応性を軽減する処置が重要であると考えられた。 昨年度は、血小板の極細金属細管への反応性を調べる前段階として、動脈硬化に模した血液流路を銅を用いて作成した。新型チップのデザインは、動脈硬化の病態生理をシミュレートするため、管径およそ2mmの冠動脈が、95%閉した状態の動脈硬化症を模した「冠動脈傷害血管モデル」とした。血液流路の幅を2mmとし、動脈硬化の病態生理に基づき流路の途中に冠状動脈が95%閉塞した状態として幅100μmの狭窄部を配置した。さらに狭窄部の内壁には、内皮細胞が剥離し、コラーゲンが露出してしまった状態を想定し、コラーゲンコーティングを施した。記録したVTRから流路の最狭窄部で流速が変化することにより、血小板にずり応力が作用し、この結果、抗血栓薬を投与しなかった血液では、最狭窄部の下流で血小板血栓の生成が観察された。その一方で抗血栓薬を投与した血液(0.3%クエン酸ナトリウム)では、同じ部位においても血栓の生成は抑制された。
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