研究課題/領域番号 |
13680955
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研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
菊池 明彦 東京女子医科大学, 医学部, 講師 (40266820)
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研究分担者 |
青柳 隆夫 東京女子医科大学, 医学部, 助教授 (40277132)
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キーワード | ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド) / 温度応答性クロマトグラフィー / 疎水性相互作用 / 静電相互作用 / 核酸アナログ / 相転移挙動 |
研究概要 |
本研究では、温度変化に応答して水溶性を大きく変化させ、低温で溶解、高温で不溶となる温度応答性高分子で修飾した担体を調製し、この担体を充填したカラムを用い、温度変化のみで溶質との相互作用を制御して分離を達成する温度応答性疎水性クロマトグラフィーの開発を目指している。とくに、DNA、RNAなど核酸はポストゲノムで重要な役割を果たす生体物質で、水系で実現できるより簡便な分離手法の開発は必須である。本研究では、3級アミノ基を導入した温度応答性ポリマーをシリカビーズ表面に固定し、ステンレスカラム(4.6mm径、150mm長)に充填した。温度を変化させながら、(オリゴ)ヌクレオチドの溶出挙動を解析した。まず、生体のエネルギー代謝で重要な役割を演じているAMP、ADP、ATPを用い、リン酸基数の違いに基づく分離を検討した。中性のPIPAAmカラムではいずれの溶質ともほとんど相互作用せずに溶出したが、3級アミノ基を有するカラムでは、リン酸基の数が増すほど、保持時間は有意に延長した。さらに、温度変化に伴う保持時間変化を調べたところ、アミノ基のプロトン化度が0.5となる点で保持時間が有意に短縮する結果となった。さらに、モノヌクレオチドで相互作用を検討したところ、溶出時間は、CMP<UMP<TMP<AMP<GMPの順に遅延した。リン酸基部分の構造はいずれの溶質でも同じであることから、この溶出時間の変化は塩基部分の構造とその疎水性に関連していると考えられる。CMP、UMP、TMPはいずれもピリミジン環を有する核酸塩基で、この中で疎水性の高いものほど溶出が遅れ、CMP<UMP<TMPの順になったと考えられる。一方、プリン環を有するAMP、GMPでも置換基の疎水性の違いによって、AMP<GMPの順で溶出したと考えると保持は塩基の疎水性の度合いによって生起していることが強く示唆された。以上の結果から、アミノ基を有する温度応答性高分子をカラム担体に用いると溶出の疎水性と静電相互作用のバランスにより保持時間の制御が可能で、分離が達成できる可能性が示唆された。次年度以降はこの結果をもとに、オリゴヌクレオチドでの溶出に与えるカチオン性基の導入量や温度応答性に関して検討を進める予定である。
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