研究概要 |
本研究では、水系で温度変化のみに応答し、表面の親水性/疎水性変化と同時に、表面荷電密度を変化させることが可能な、新規な刺激応答性高分子修飾シリカビーズを設計・調製し、このビーズを充填したカラムを用い、生理活性物質の水系での効率的な分離を可能とする水系クロマトグラフィーシステムの構築を目的とした。昨年までにカチオン性のアミノ基を導入した温度応答性高分子修飾表面の、温度変化に伴う表面物性変化を、親水性/疎水性変化と同時に、光散乱電気泳動測定から表面電立の測定から明らかとした。さらに、生体エネルギー代謝に関わるアデノシンヌクレオチド、ならびにモノリン酸ヌクレオチドとの相互作用を解析した。これらの結果を基に、本年は、アデノシンオリゴヌクレオチド、ならびにチミジンオリゴヌグレオチドに関し、カチオン性温度応答性カラムとの相互作用を解析した。繰り返しユニットが2量体から5量体まで種々変化させたオリゴヌクレオチドの混合試料を、温度応答性高分子修飾したシリカビーズを充填したカラム(150mm,4.6mmφ)に注入した。温度を10℃から50℃と変化させながら各試料の保持時間を測定したところ、荷電基を持たない温度応答性カラムでは、いずれのオリゴヌクレオチドでも温度に関わらず保持時間はほぼ一定であった。一方、カチオン性基を有する温度応答性カラムでは、ヌクレオチドの繰り返しユニット数の増大につれ、保持時間が有意に延長し、かつ、カラム担体上のカチオン性基量が増加すると保持時間は延長した。さらに、核酸塩基ユニットの極性の差が保持時間に影響し、核酸塩基の疎水性がわずかに大きいチミジンオリゴヌクレオチドのほうが、リン酸基数が同じときの保持時間が長くなった。以上の結果から、本研究で追究したカチオン性温度応答性カラムは、核酸塩基を認識して分離を達成できることが強く示唆された。
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