ティシュ・エンジニアリング用足場材としての刺激応答性ポリマーヒドロゲルの開発

2001 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13680957
• 研究機関: 近畿大学
• 研究代表者: 杉山 一男 近畿大学, 工学部, 教授 (00088577)
• 研究分担者: 岡田 清孝 近畿大学, 医学部, 助手 (20185432) ; 松尾 理 近畿大学, 医学部, 教授 (40030879) ; 白石 浩平 近畿大学, 工学部, 助教授 (10196602)
• キーワード: 2-(ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド / メタクリル酸メチル / 温度応答性ポリマー / 低温プラズマ処理・ポスト重合 / HeLa細胞 / 細胞培養用基材 / 温度刺激細胞剥離 / フローサイトメトリー

研究概要

水中で温度に応答して相転移[低温(ランダムコイル)【double arrow】高温(グロビュール)]する2-(ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド(HPMA)とメタクリル酸メチル(MMA)コポリマー(PHPMA-co-MMA)をポリエチレンテレフタレート(PET)上にArプラズマ照射/ポスト重合法でグラフトした。このときHPMAとMMAの混合比を変え、MMA含量がそれぞれ19,14,10mol%の3種のPHPMA-co-MMAグラフト鎖をもつPET(g-PET/1-3)を得た(グラフト量:0.10〜0.20mg/cm^2)。グラフト鎖と同じMMA組成をもつPHPMA-co-MMAの相転移温度(LCST)はそれぞれ33℃、37℃、42℃であった。XPSからPHPMA-co-MMA(MMA含量:19mol%)のグラフトを確認したg-PET/1(0.134mg/cm^2)の水に対する静的接触角(θ=45°)は未処理PET(θ=80°)より低下し、室温でg-PET表面に散漫ヒドロゲル層が形成されることが確認された。
g-PET/1を24wellのプラスチック製プレートの底に貼り付け、HeLa細胞(2.0×10^4 cells/well:10%FBS含有MEM培地)を播種して33℃で96h静置培養した結果、未処理PETおよびg-PET/1ともにほぼ同数の増殖(3.8×10^4 cells/well)を認めた。つぎにプレートを低温で静置(4℃,2h)すると未処理PETでは細胞形態は変化せず、接着したままであったが、g-PETでは細胞が球状に剥離した(位相差顕微鏡)。浮遊した細胞を含む培地を採取したのち、再び培地(4℃)を加えて剥離した細胞を合わせて計数した結果、g-PETでは全細胞数の74%が剥離(未処理PET:41%)した(フローサイトメトリー:FACS)。

研究成果

• [文献書誌] 杉山一男, 力丸智史, 岡田芳治, 白石浩平: "Preparation and application of chiral recognizable thermosensitive polymers and hydrogels consisting of N-methacryloyl-s-phenylalanine methyl ester"Journal of Applied Polymer Science. 82. 228-236 (2001)
• [文献書誌] 大段恵, 辻本政志, 白石浩平, 杉山一男: "感温性2-ヒドロキシプロピルメタクリルアミド/メタクリル酸メチル共重合体をグラフトしたPETフィルム表面でのHeLa細胞の増殖・剥離"高分子学会予稿集. 51巻(発表予定). (2002)
• [文献書誌] 多賀雅泰, 三浦浩二, 白石浩平, 杉山一男: "両性イオン構造をもつO-メタクリロイル-L-セリンとV-イソプロピルメタクリルアミド共重合体ゲルのpHおよび温度による膨潤・収縮挙動"高分子学会予稿集. 51巻(発表予定). (2002)
• [文献書誌] 白石浩平, 高田直幸, 杉山一男: "N-イソプロピルアクリルアミドと両性イオン構造をもつアミノ酸修飾メタクリレート共重合体のpHおよび温度応答性"高分子学会予稿集. 50巻・14号. 3768 (2001)
• [文献書誌] 白石浩平, 山路 毅, 杉山一男: "N-2-ヒドロキシプロピルメタクリルアミドとMMAからなる両親媒性ポリマーの調製と温度応答性"高分子学会予稿集. 50巻・14号. 3769 (2001)
• [文献書誌] 白石浩平, 高田直幸, 池田祥子, 杉山一男: "ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド-co-O-メタクリロイル-L-アミノ酸)の温度およびpH応答性"高分子学会予稿集. 50巻・5号. 1063 (2001)