本研究は我が国の12世紀後半から13世紀初頭にかけてのいわゆる鎌倉仏教成立期における、民衆による造像起塔といった古代以来の作善行について、その教義的な比較はもとより、仏像や舎利器といった遺物信仰の諸相を調査し、検討することを目的としている。本年度は、岡山県東寿院に伝来する快慶作阿弥陀如来像や、京都・極楽寺阿弥陀如来像の像内納入品史料の結縁交名の分析を通じて、中世の作善信仰の実態を検証した。 また我が国における祖師遺物への信仰と、宗教改革期におけるキリスト教文化圏での作善信仰の比較研究に関連して海外での調査を行った。特に中世末期のヨーロッパにおける聖遺物信仰に関わる遺物の調査として、オーストリア・ウィーン美術史美術館伝来のハプスブルク家収集品などを比較研究の資料として調査を行った。 本研究に関わる成果報告としては平成13年度日本宗教学会において「中世仏教の成立と聖遺物信仰の展開」と題して、本調査の概要と将来構想も含めて発表した(於:久留米大学2002.9)。また論文としては上記の研究を『宗教研究』75-4(2002.3)に発表した他、「仏師快慶とその信仰圏」と題して、岡山・東寿院阿弥陀如来像、京都・大報恩寺十大弟子像、京都・極楽寺阿弥陀如来像など快慶晩年の造像例の像内納入品史料からその信仰圏の実態に迫った。(『伊藤唯真教授喜寿記念論文集 日本仏教文化論集』(2002法蔵館刊)。
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