1.本年度は当初の計画通り、まず現象学的人間学における意識分析、およびその精神医学・精神分析との関係についての基本文献と最新の研究資料を集中的に購入し、(1)無意識的な身体イメージとその再帰的・遠隔操作的構造(2)言語記号的な構造化と感覚的統一の循環的な関係およびそのシンボリズム(3)フロイト主義的な身体論と現象学的身体論の関係(4)現象学的な対他関係論と精神分析の突き合わせ(5)ラカン派の精神分析の記号論的アプローチについての現象学による再評価およびその限界の画定(6)意識構造の成立における視覚芸術的イメージ(絵画・映画を含む)の媒介の意味などを主題に、集中的に考察を行った。 その成果は主として、来年度前期に刊行予定の「メルロ=ポンティと精神分析」(日仏哲学会『フランス哲学・思想研究』7号所収)という題の論考において発表される(論文受領済み)。また、精神分析な知と現象学的反省の関係についてのジャック・デリダの考察を以上の視点から再考し、精神分析的知そのものの政治性・制度性へと考察を拡張した。その成果の一部は、来年度刊行予定のデリダについての共著(『デリダ』講談社選書メチエ)において活用する予定である。 2.データ分析については、予定通り最新のマッキントッシュ・コンピュータとそれに対応するUSB仕様のプリンタ・スキャナなどの備品を新たに購入し、最低限の研究環境を整えることができた。まずミシェル・フーコーの精神医学についての諸考察を手がかりに基本的な主題や語彙を整理中である。
|