研究概要 |
以下,17世紀・18世紀のそれぞれについて記す. 17世紀については,『四書集註』をはじめとする朱子学の基本的な書物の諺解本の調査・収集を行った。諺解本とは,漢籍を漢字カタカナ混じり文で翻訳解説した書物のことであるが,17世紀から18世紀の初めにかけてという時期は,儒教の社会的受容という観点から見ると,この時期に新たに成立してきた出版業とむすびついて朱子学の基本的な書物の諺解本が数多く著され刊行されていることが注目される.その刊行状況の概略については,かつて一度論じたことがあるが,その後の研究の進展に伴い,再度詳密な調査を行って議論を組み立てなおす必要がでてきている.そこで,今年度は,この点についての基礎的な調査を行った。 18世紀については,これまで取り組んできた彦根藩武家社会における徂徠学の受容という問題に引き続き取り組んだ.とくに今年度は,これまでに発掘してきた史料を系統的に紹介していく作業の手始めとして,論文「江戸護園派と彦根藩士」を執筆し,彦根藩武家社会における徂徠学受容の初期の様相を史料に即して明らかにした。今年度は,同稿で紹介したものに限らず広く史料を収集して分析を加えるという基礎的な作業を行ったので,今後は,今年度に行った基礎的な作業を土台として前掲稿に続く論文をまとめていく予定である.
|