本年度における実績としては以下の2点である。 第1点としては六道十王図に関する画像データベースの構築が挙げられる。14世紀までの代表的な六道絵7件を含む、六道十王図およびその関連作例157点について、大判フィルムから作成したデジタル画像による画像データベースを構築することができた。また他界観を背景とした説話画としては、中世の代表的な善光寺如来絵伝である本証寺本・満性寺本を精査し、画像の収集をおこなった。 第2点としては実地調査の難しい中国や韓国における関連作例を中心におこなった文献収集が挙げられる。見込みを含めての収集であったためにピンポイント的な収集とはならなかったが、特に中国についてはある程度の系統性を確保できる収集量となった。 六道十王図としては近世初頭までの代表的な作例をほぼ網羅できる、細部検討の可能な画像データベースを構築できたことは本年度の最大の成果であり、これの活用によって六道十王図研究は系統的でシステマティックなものとなってゆくことが期待できる。また、これまで美術史的に目を向けられることのまれであった善光寺如来絵伝についても、現世と他界とのっながりを図示する重要な作品群として今後再評価されることが期待できる。執筆作業がやや遅れてはいるが、これらの成果はおって論文化される予定である。 反省点としては、韓国における関連文献の収集に、思うほどの成果がなかったことが挙げられる。韓国での研究活動の充実を待ちつつさらに収集を継続すると共に、同国については実地での直接の資料収集が必要であるかも知れない。
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