研究概要 |
本年度は,接続関係の処理手続きを解明するための一連の実験的研究を実施した. 連文に対して被験者が推論した接続関係,および,その推論の手がかりとなった情報,さらに,推論の結果としての連文の内的表象について,その反応データから明らかにすることができるように,被験者には,「1.連文間に適切な接続詞を挿入させる」,「2.接続詞の選択理由を口頭で説明させる」,「3.連文を意味を変えずに1文に要約させる」といった一連の課題を課した. 「1.接続詞選択」と「2.接続詞選択理由」の結果分析においては,選択された接続詞の類型毎に,その選択理由として言及される手がかり情報(前文の表現・後文の表現・前文の意味内容・後文の意味内容・前文以前の文脈・接続関係,等)の出現頻度に差が見られた.例えば,「順接」の接続詞の選択理由として高頻度で言及された「前文以前の文脈」は,「逆接」の接続詞の選択理由としては,ほとんど言及されなかった.これらの結果は,接続関係毎にその推論過程が異なることを示唆している. また,「1.接続詞選択」と「3.連文要約」の結果分析においては,選択された接続詞の類型毎に,連文を要約するために用いられた方略(節並置・節埋め込み・格要素埋め込み・削除,等)に差が見られた.このことは,連文の持つ接続関係毎に,その連文の内的表象の性質が異なることを示唆している.
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