研究概要 |
1.空間認知における視覚と運動の統合 時々刻々と変化する環境内で適切な行動を実現するためには,単に視覚からもたらされる情報に基づいて外界の空間構造を脳内で再構築するのではなく,環境の機能的表現を,行動の主体である自己の運動との関わりに基づいて構築しなければならない.本研究では,視覚と運動が統合され環境の機能的表現が形成されていく過程を,自己運動知覚における異種感覚の統合という観点から考察し,自己運動によって生成される環境と自己の関係の変化のイメージが,環境の機能的表現の形成に重要な役割を果たしていることを明らかにした. 2.垂直視差の補間による両眼対応問題の解決 明確な端点が観測されない線分刺激の両眼対応においては,線分の方向に沿った視差成分が不定であるため,その対応に不確定性が残る窓枠問題が生じる.本研究では,両眼対応の窓枠問題が生じる要因が,視線方向を示す眼球位置情報の不確定性に起因することを示し,視線方向情報をもたらす視覚手がかりである垂直視差を用いた窓枠問題解決の計算理論を提案した.この理論によれば,拡大・縮小視差に囲まれた線分は,その方向と直交する方位に傾く面上にあるように知覚される.この予測を検証する心理物理実験を行ったところ,その妥当性を支持する結果が得られた.この結果により,両眼対応という両眼立体視の初期段階での処理が,垂直視差からの眼球位置情報によって制御されていることが明らかとなった.
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