研究概要 |
本研究の目的はラットのレバー押し行動に対して与える報酬の量的なヴァラエティーが、レバー押し行動および摂取行動に対して与える影響を調べることである。動機づけ行動に関する馴化理論(Aoyama & McSweeney,2001; McSweeney & Swindell,1999)の予測にしたがえば、報酬の質的なヴァラエティー(例、味などのヴァラエティー)だけでなく、量的なヴァラエティーも摂取量の増加をもたらす。本年度は全てのレバー押し行動に対して報酬を提示する連続強化条件でこの予測を検証した。実験1では、液体報酬(砂糖水)を用いた。被験体は6匹のラットであり、餌の量を制限して自由摂食時体重の約85%に減量した。水は自由に摂取可能であった。砂糖水の提示時間を毎回3秒とする統制条件と餌の提示時間を1秒から5秒(平均3秒)の間で変化させる実験条件とを比較した。結果は、実験条件の方が総反応量と総摂取量が多くなり、馴化理論の予測を支持した。実験条件と統制条件は、1回の強化あたりの平均摂取量は同程度であった。このことは、実験条件に短い報酬提示時間が含まれるためにセッション内での摂取量が少なくなり、そのために飽和が弱くなった結果として反応が増加したのではないことを意味する。したがって、馴化理論が支持された。実験2では、6匹のラットを用い、21.5時間の摂水制限をかけて、水を報酬とした実験を行った。餌は自由に摂取可能であった。それ以外の実験条件は実験1と同様であった。結果も実験1と同様であり、実験条件において総反応量も総摂水量も増加した。1回の強化あたりの平均摂水量は両条件で同程度であった。したがって、量的なヴァラエティー効果が摂食行動と摂水行動の両方で確認され、馴化理論を支持した。
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