近年、成人期の生活習慣病の予防への関心が高まる一方、青少年の薬物乱用や性感染症の急増が報告されており、青年期の健康関連行動への関心が高まってきている。本研究は、青年期のヘルスリスク行動を規定する心理社会的要因を明らかにすることを目的としている。その手段として、ヘルスリスク行動を記述・予測する概念モデルを構築し、実証的に検証する。 本年度の研究実施計画は、概念モデルの構築とその有用性を検証するための予備的研究として、1)概念モデルの仮説構築、2)ヘルスリスク行動の特定、3)ヘルスリスク行動に関連する心理特性を図る尺度の特定を行うことにあった。 文献研究により、Jessor & Jessor(1977)のproblem behavior theoryとIrwin & Millstein(1992)のモデルに基づく、青年期のヘルスリスク行動への関与を記述する概念モデルの仮説を構築した。具体的には、認知的発達、自尊感情、知覚された社会規範が、ヘルスリスク行動への危険知覚に影響を及ぼし、実際のリスク行動への関与を規定するというものである。高校生105人を対象にパイロット調査を実施し、質問紙の妥当性を検討した。さらに大学生808人を対象として本調査を行った。ヘルスリスク行動への関与は、喫煙・薬物使用・飲酒・安全でない性行動・安全行動によって測定された。統計パッケージSASによる因子分析の結果、健康危険行動として1)喫煙、2)薬物使用、3)危険行動の早期の試み、4)安全でない性行動、が抽出された。 ヘルスリスク行動に関連する心理特性として、認知的発達、自尊感情、社会規範、危険知覚が選定された。認知的発達、自尊感情を測定する尺度は日本語版が作成されておらず、英語版から日本語版へのバックトランスレーションを行った。各尺度について、信頼性・妥当性の検討を実施し、不適当な項目の削除・修正を行った。
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