昨年度の研究に続いて、本年度は、電子ブレーンストーミングの手法に対して音声認識システムを導入し、その効果を確認する実験を行った。電子会議の問題点として、キーボードへの入力の手間によって、それが苦手なメンバーにとっては、アイディアの産出が困難なことが指摘されている。そこで、音声認識システムを組み込んだ電子会議と、従来の電子ブレーンストーミングの生産性を比較した。 3人の女子大学生から成る、13個のグループに次の作業をさせた。1)手入力:通常の電子ブレーンストーミングと同じく、キーボードによってアイディアを入力して、ブレーンストーミングを行う。2)口頭入力:音声認識システムを利用して、口頭による入力を行う。口頭で入力したアイディアは、音声認識システムによってテキスト化され、メンバーの画面に提示される。これらの作業の順番は、グループによってカウンターバランスされた。なお、被験者は、発見型、予測型、問題解決型のアイディア産出課題のそれぞれに対して取り組んだ。 これらの作業で産出されたアイディアについて、5名の評定者が、その独創性と実現可能性を評定した。また、ブレーンストーミングの後に、手入力と口頭入力のそれぞれについての作業の楽しさや難しさ、課題に対する集中や動機づけなども測定された。 実験の結果、生産性は、手入力のほうが高く、満足感、楽しさ、集中についても、手入力のほうが高かった。課題やシステムの難しさは、口頭入力のほうが高かった。このように、高等入力によるブレーンストーミングが効果的ではなかった結果は、現在の音声認識システムの認識精度の低さや、評価懸念の発生によるものではないかと考えられる。
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