ネットワーク形成に果たす公正感の役割とその感情的基盤を調べるために、2001年4月〜6月にかけて、最後通牒ゲームと独裁ゲームを用いた研究を行った。これらのゲームは、見知らぬ他者と自分との報酬分配に関するもので、公正な報酬分配を行う者に特徴的な感情や行動傾向との関連性を調べるために、日本人被験者を用いた実験が行われた。この結果、「他者一般への共感能力」の高い者が自発的な公正分配を行う傾向の高いことが見出された。この結果は、8月のアメリカ社会学会、10月の日本社会心理学会にて報告された。さらに、この知見をより詳細に検討するために、日本人とカナダ人被験者を用いた比較実験研究を2001年12月〜2002年3月に実施した。この研究では、日加の文化比較を行うと共に内集団と外集団の区別が報酬分配に及ぼす影響についても調べられるような実験デザインを組んでいる。現在、データ収集を完了し、分析を行っている。 さらに、2001年7月と10月に、他の種類のネットワークにおける感情の役割を調べるための実験研究を行った。不公正な扱いを受けたときに生じる、義憤のような感情が、社会的ジレンマでの非協力者を罰する行動(サンクショニング)を引き起こす可能性を検証した。この結果、ただ乗り行動に対し感情的になる被験者はほとんど見られず、義憤感情の引き起こすサンクショニングは行われないことがわかった。この知見は、11月の日本グループ・ダイナミックス学会で発表されたが、その際に実験デザインの問題点が議論されたため、代表者は現在新たな実験を計画中である。 その他、土木事業に関する住民合意形成の場などの現実場面で、これらの研究知見をどのように応用できるかに関する論文を『土木学会誌』に掲載している。
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