研究概要 |
本研究は,外国語の語彙の獲得に影響を与える要因を探り,語彙の効果的な学習方法を提案することを目的としている。そのために,これまでに提唱されてきた学習法の再検討,及び新しい学習法の意義と有効性の検証を行おうとするものである。 今年度は,まず,単語のもつ特性によって心内辞書における語彙表象-概念表象間の関係やそれに基づく認知処理過程が異なる可能性について,日本語と英語の単語を用いた実験的な検討を行った。その結果,同じ二言語(たとえば日本語と英語)の間でも単語の種類(漢字語,カタカナ語など)により心内辞書における表象間の関係性が異なること,ひいてはその処理においても違いがあると推測されることが示された。このことは,効果的な語彙学習法を考えるに際して,単語の種類を考慮する,すなわち単語の特性に応じた学習法の開発が必要であることを示唆している。 さらに,獲得した外国語語彙を単独で処理する場合と意味的文脈が与えられる文中で処理する場合とにおいて,当該言語の習熟度による違いがあるか否かを比較検討し,習熟度の低い被験者群では与えられた意味的文脈を適切に利用することができずネガティヴな影響を受けやすいこと(すなわち意味的混乱が生じること)が見いだされた。これより,語彙の単なる暗記ではなく実際的な運用という点から,その学習時に意味的文脈を利用することの必要性が示された。 現在は,これまでに提唱されている代表的な語彙学習法の認知的特性を上記の結果に基づき再分析しており,その後,それらをより効果的に用いるための要件の特定をめざした実験を実施する。加えて,意味的文脈に着目した新しい学習法の提案とその有効性が及ぶ範囲についての検討を行う予定である。
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