研究概要 |
本研究の目的は,算数問題解決における相互教授法を開発し,その効果について検討することである。 そこで,まず,算数文章題の解決能力の評価方法に関する実験的検討を行った。算数文章題は,(1)変換,(2)統合,(3)プラン,(4)実行の4つのプロセスに分けることができるとされるが,日本の小学生の場合には,単文レベルの理解が求められる変換段階と計算技能が必要な実行段階は多くの子どもにとって問題のない段階であることが分かっている。そこで,本研究では,残りの統合とプラン段階の内,文章題分類課題を用いて統合段階を査定することによって,文章題の解決能力を評価できるかどうかについて検討した。 具体的には,小学校5年生を対象にして,目標(質問文)明示が文章題分類課題の成績に影響するかどうかを検討した。その結果,文章題分類課題の成績には,目標明示の効果が見られないことが明らかになった。Okamoto & Iuchi(準備中)によれば,算数文章題を実際に解く文章題解決テストでは,目標明示の効果が検証されているので,今回の実験に用いたタイプの文章題分類課題では,算数文章題の解決能力が評価できないといえよう。 また,カリフォルニア大学サンタバーバラ校にて,メイヤー教授とメタ認知の査定法についての討論を行い,自己報告によってメタ認知を査定する方法がもっとも適当であるが,発語思考法を子どもに適用した場合には認知負荷が大きく問題解決そのものを阻害してしまう可能性があるので,岡本(1992)が使用している刺激再生インタビュー法のような事後インタビュー形式の方法がもっとも妥当であろうと考えられた。
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