研究概要 |
感情表出の社会化に,家族が重要な役割を果たすことは多くの研究で論じられているが,影響過程については明らかにされていないところが多い.本研究は,(1)家族形態により,子どもの感情発達の違いが生じるプロセスを明らかにするためのデータを収集すること,(2)祖父母-父母-孫の三世代間において,いかなる心理的な授受が行われているのかを明らかにすることを目的としている. 今年度は,家族の感情表出性を測定する質問紙(Family Expressiveness Questionnaire ; Halberstadt,1986)の日本語版(日本語版FEQ)を作成した.また,FEQ項目にない感情についても検討するため,39の感情について,それぞれ(1)家族の中で感じる程度,(2)家族の中でどの程度表現してきたか,(3)家族の中で表現することを抑えてきた程度,(4)家族同士で表現し合う程度を尋ねる質問紙を作成し,FEQとともに女子大学生を被験者として予備調査を実施した.家族形態(三世代家族・核家族)による家族の感情表出性について検討を行ったところ,FEQについては家族形態による違いは見出されなかった.一方,作成した感情表出についての質問紙においては,「家族の中で感じる程度」については,「いたわり(三世代>核家族)」・「失望(核家族>三世代)」で有意な傾向が見られたのみであり,感情を家族の中で感じる程度は家族形態にかかわらずほぼ同程度であったといえる.しかし,表出については家族形態による違いが見出され,三世代家族の者は,核家族の者よりも不安や恐れ,心配といったネガティブ感情を家族の中で表出する傾向があった. 以上の予備調査に基づき,14年度は2被験者群(大学生とその父母および幼児の父母)に対して質問紙調査を行い,さらに幼児の感情表出性に家族の感情表出性が及ぼす影響を検討する予定である.
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