研究概要 |
本研究は,児童の学校享受感と,児童が保護者・担任教師・友人に期待する対応との関連を調べたものである。対象は,小学校4,5,6年277名である。分析の結果,次のようなことが示された。(1)教師に期待する対応では,学校享受感3群間に有意差が見られ,学校享受感の高さに応じて教師への直接的援助に対する期待が高くなる。これに対して,教師の間接的な対応に関しては有意差が生じなかった。このことから,学校で起きる出来事だけに,提示された場面では,子どもたちは,総じて教師の直接的な対応を保護者よりも期待したと考えることができよう。(2)保護者に期待する対応に関しては,間接的対応で有意差が見られ,学校享受感高群と低群では,孤立場面で保護者の間接的対応を期待するのに対して,学校享受感の高群は,失敗場面での保護者の間接的対応をより期待していた。低群が保護者に間接的な対応を期待するのは,高群のように教師や友人の援助を引き出すために,保護者の間接的な対応を期待するのではなく,古市(1991)の指摘の通り,学校享受感低群は友人適応に問題を抱えている場合が多いために,自力での問題解決への自信のなさが形成され,これが得点の高さに反映されたと推察される。(3)友人の積極的対応因子については,学校享受感の高群が低群よりも,直接的な援助を求める傾向が強く見られた。また,友人の見守り因子については,学校淳受感低群が,他の2群よりも友人の見守り因子の下位尺度得点が低い傾向にあった。この結果は,場面に関わらず,友人に期待する対応因子として,学校享受感が高い者ほど,積極的な対応にしても,友人からの見守りにしても,友人の対応への期待が高いことが明らかにされた。
|