研究概要 |
第一に,人間とコンピュータを相手とした社会的交換状況において,相手の決定方略が決定および決定に至る認知プロセスに与える影響を検討した.具体的には,繰り返しのない囚人のジレンマを課題として,(1)ゲームの相手(同じセッションの他の参加者/コンピュータ),(2)相手の決定方略(50%でランダムに選択/どのような方略をとるかは不明)の2条件の効果を検討した.主な測定指標としては,(1)決定(協力/非協力),(2)決定に要した時間,(3)状況に対する主観的利得構造変換,の3つを用いた.結果から,(1)人間を相手とした交換状況は,状況を「相手が協力してくれるなら自分も協力したほうがよい」という状況へと主観的に変換して認識させる,(2)人間を相手とした場合の方が協力率が高い,(3)人間を相手とした場合は,非協力を決める方が協力を決めるより時間がかかる,という3点が示された.これらの結果は,同じ構造を持であっても、対人的な相互作用を行うときには,コンピュータ相手の意思決定とは異なる認知過程が働いていることを示唆している.我々の社会的行為に特徴的に働く認知過程を明らかにしていくことが今後の課題と考えられた. 第二に,決定過程における情報処理プロセスを明らかにするために,利得情報への注視時間を扱うことを検討した.具体的には,眼球運動の測定,およびMoving Window Systemによる注視時間の計測方法について検討した.これを用いた実験を計画・実施することが次年度の課題である.
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