本研究の目的はアイデンティティを他者との関係の中で発達するものととらえ、大学卒業後5年目に達した約30名の女性に面接調査を行い、同じ対象者を大学3年生から4年生まで追跡調査した5年前の結果と合わせて、関係性の観点から見たアイデンティティの発達プロセスとその要因を明らかにすることであった。交付申請書に対応させた本年度の成果は以下の通りである。 1.面接質問項目の改訂 筆者がこれまで用いてきた面接質問項目は大学生用に作成されているため、これを初期成人期に適合するように改訂した。具体的にはアイデンティティの領域のいくつかを差し替え、質問項目の一部を変更した。また、原版は面接項目が多いために、対象者の負担が大きく、把握する情報の焦点が暖昧になるという問題点があったため、項目の焦点化を図った。さらに、アイデンティティの状態を客観的に把握するため、面接調査だけではなく質問紙による測定も加えることとした。この他、アイデンティティ発達の要因を特定するために、大学卒業後に経験したライフイベント、人間関係の変化、価値観の変化などについて把握するための自由記述を含む質問紙を作成した。 2.予備面接の実施 改訂した面接質問項目と新たに加えた質問紙の妥当性を検討するために、予備的な面接調査を行なった。対象者は大学時代にも予備面接を依頼した対象者6名であった。 3.予備面接の結果を踏まえた質問項目の改訂 現在は予備面接の結果を踏まえて面接項目の最終的な改訂を行っている段階である。来年度の計画は、(1)本調査の対象者に連絡を取り、居所の確認、調査への参加の同意(倫理面に配慮する)、就業や結婚の状況などについて把握すること、(2)本調査を開始することである。
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