平成13年度は、以下の研究準備作業およぴ研究を実施した。 1、不快情動喚起刺激の作成ならびに刺激呈示システムの構成 本研究においては、否定的な情動を適度に喚起する刺激をあらかじめ作成することが不可欠であった。そこで、10種類以上の映像刺激を収集し、多数の評定者に呈示して喚起される情動を吟味し、適切な刺激および刺激部分を選定した。さらに、これら刺激を集団に対して効果的に呈示する映像投影システムを構成した。 2、不快情動刺激の記憶と想起の研究 上記刺激を呈示し、直後に喚起される情動と映像の印象の評定を求めた。1週間後、同様の刺激呈示と評定に加え、想起された刺激内容などを取得した。その結果、当該情動喚起刺激に関連した外的刺激による想起と自動的・内発的な想起の、2種の想起プロセスが示唆された。 3、自己隠蔽性と青年期女子の食行動異常との関連の検討 自己隠蔽性(不快でトラウマティックな経験を他者にうち明けない傾向)と青年期女子の食行動異常との関連を質問紙調査によって検討した。その結果、「痩身願望」とともに自己隠蔽性は食行動異常に対して有意な正の相関をもつこと、コミュニケーションの希薄さも食行動異常を増悪させること、などが明らかになった(日本心理学会発表予定)。 4、抑制的会話態度尺度英語版の作成と国際比較の予備的検討 会話の中で否定的な情動を一般に抑制する傾向を抑制的会話態度と呼ぶ。報告者は英語版抑制的会話態度尺度を作成し、アメリカ人大学生に実施して尺度の信頼性を検討した。現段階ではおおむね英語版の信頼性は高く、日本人被験者と同一の結果が得られた。今後は、抑制的会話態度と心的反芻および不快情動の符号化の関連をさらに検討する。 今後は、これらの知見を確認するとともに作成した刺激や心理尺度を用いて、この領域においてより核心に迫り得る実証的研究を継続する。
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