研究概要 |
本研究では,幼児がレジリエンスを効果的に発揮するためのサポート環境を,家庭環境と保育環境の中で明らかにすることを目的とし,平成13年度は,家庭と幼稚園における幼児のストレス反応とその対処行動を調査し,両者の関連を分析した。まず,母親および保育者を対象とした質問紙調査より,ストレス場面での幼児の反応とその対処行動についての検討を行い,日常生活において頻繁に認められるストレス場面および対処行動を抽出した。その後,幼児自身にそれらのストレス場面でのレジリエンスに関連する反応,および幼児によって認知されている母親との関係,保育者との関係について聞き取り調査を行なった。その結果,幼児のストレス反応「対人緊張」についての母親と保育者による評定,およびレジリエンス要因「資源」,「意欲」,「楽観」に関する両者の評定は高い相関にあることが示され,両者の子どもに対する認知には大きなずれはないことが示された。ただし,保育者が母親との関係を良好でないと感じている場合,母親は子どもにストレス反応「機嫌の悪さ」が多く見られ,保育者は子どものレジリエンス要因「意欲」は低いと認知していることも示され,家庭と園の連携のあり方が,子どものストレス反応とレジリエンスに影響を与える可能性が示唆された。また,子ども自身による聞き取り調査では,子ども自身がストレス場面において「意欲」的な反応を回答したり,「資源」として多くのサポートを得られていることを回答した場合には,母親や保育者にはストレス反応が少ない子どもとして認知されていることが明らかとなり,母親と保育者および幼児の回答における一致した結果が示された。今後は,母親,保育者,および個々の子どもの回答の詳細な分析より,家庭と幼稚園との連携を調査し,母親-幼児-保育者の関係性とストレス対処様式の関連を分析する。
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