本年度は、都市-農村関係の変容、農村地域における内発的発展という2つの研究課題のうち、後者の研究課題を中心に展開を試みた。ここでの主な成果は以下の2点である。 1 農村地域の内発的発展に関する既存研究の批判的検討とそのオルタナティブの追求 研究の第一段階として、農村地域の内発的発展に関する既存研究の批判的検討を行った。ここで見出されたのは、本来必ずしも自明ではない「内発性」と「発展」の結びつきを前提とした、「内発的発展」概念規定の問題である。こうした概念規定の問題を乗り越えうるオルタナティブとして、参加する人々による「発展」の定義を組み込んだ「発展」概念規定の可能性を提示した。ここから、農村地域の内発的発展の実証研究を進める上での理論的基盤が獲得される。 2 農村地域の内発的発展に関する実証的研究 上述の既存研究の批判的検討から得られた理論的基盤をもとに、北海道道央三市町村(滝川市、北竜町、新篠津村)と、愛知県西三河四市町(西尾市、一色町、吉良町、幡豆町)を事例に実証研究を展開した。ここでは、農村地域における有機農業実践、農村女性グループ、新規参入農業者、グリーン・ツーリズムの展開を総合的に分析を行った。ここで得られた知見は、(1)それぞれの活動が、政策的意図とは異なる地域的展開を志向していること、(2)それぞれの活動が他の活動とのネットワークを形成していること、の2点である。ここから、農村地域における内発的発展の社会的基盤形成のメカニズムに関する理論的展開が可能となると思われる。 以上、今年度の知見を踏まえつつ、次年度は、残る都市-農村関係の変容という研究課題を追求することから、さらなる展開を行う予定である。
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