石川県金沢市において、介護保険と社会生活に関する意識調査を実施した。対象者は、2001年12月31日現在で69歳以下の有権者、計画サンプルは500である。二段無作為抽出法により、投票区を単位として調査地点25を確率比例抽出し、選挙人名簿を用いて各地点から20名を等間隔無作為抽出した。実査期間は2002年10月15日から11月22日。有効回収数は282、有効回収率は56.4%であり、郵送法による調査としては良好な回収状況であった。調査活動への正しい理解が得られるように、回答者には2003年1月に10ページのレポートを郵送し、謝意を伝えた。 調査項目は、介護保険制度の諸側面への意見・態度のほか、高齢時の不安感、公的年金制度への信頼、同居志向、家族観等の一般的社会意識項目であり、他にフェイス・シート項目として職業、教育年数、居住年数、世帯収入、家族構成などを尋ねた。 単純集計レベルで、2001年実施調査(松本市)のデータと比較したところ、以下の点が明らかとなった。 (1)金沢市の方が制度の理解度はやや低い。(2)その一方で制度の有用性、サービスの現状評価、信頼は相対的に高い。(3)保険料方式への肯定的態度が相対的に高い。(4)弱者への負担が重すぎる制度であるとの認識は相対的に低い。(5)外部サービス利用の抵抗感が相対的に低い。(6)高齢期の生活の経済的側面への不安は同率で高く存在するが、介護供給への不安は5ポイントほど低い。以上のように、介護保険制度による介護サービス提供の現状について、松本市より金沢市住民の方が相対的に肯定的な態度が確認され、制度運用の自治体間での差異の存在が住民意識レベルで確認される結果が得られた。金沢市住民において介護保険制度に整合的な、介護のあり方・社会福祉制度理念への態度の存在がその要因となっていることが考えられる。
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