研究代表者は平成10年度から2年間、文部省科学研究費(日本学術振興会特別研究員奨励金、「地方の時代以降における地方政治と住民運動に関する実証的研究」)によって、新潟県巻町・柏崎市の比較研究に取り組んできたが、平成13年度からの本課題はその継続という性格を持っている。二都市が原子力争点をめぐって対照的な選択を行った本事例は、社会的リスクが不平等に配分され、「受益圏・受苦圏」の社会的亀裂が集約化・先鋭化しているような、「リスク社会」(U.Beck)の今日的位相を明らかにしている。 そこで平成13年度は第一に、リスクの発生源となっている大都市において「持続可能な都市」づくりがどのように可能なのかという問題意識に基づき、神奈川県鎌倉市における「環境自治体」形成過程の事例研究を本格的に開始した。その結果、環境の画一化や計画インフレといった傾向や環境定義のスポンジ化、NPO参加をめぐる論点の複雑さ、等が環境ガバナンスの障害になることが明らかになった。この調査成果は、別に示したように「『環境自治体』は環境ガバナンスを形成するか」と題した雑誌論文として発表した。関連して、『環境社会学研究』に環境運動と環境政策に関するレビュー論文を執筆した。 第二に、二都市における選択をもたらした構造変化を探るため、新潟県における調査を継続し、平成14年度にはサーベイ調査を予定している。リスク配分格差は、住民の生活空間における情報メディア接触行動や情報批判力の格差に由来するのではないかという仮説に基づき、離散したフローの空間(M.Castells)の情報構造を明らかにしてゆく。
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