家業継承者の生活史を分析することによって、個人のライフコース選択の場面で、家族関係がどのように影響するか、地域や社会の状況がとのように影響するかといった、個人・家族・地域・社会の相互連関が見えてくる。これを経営体である家族の視点に立って捉えると、経営体としての家族は、家族を存続するために、どのように家族メンバーや地域コミュニティを資源として取り組み、社会変動に適応してきてかといった、家族の存続戦略が見えてくる。 本研究では、北関東の商業都市高崎市で、農業や商工業の家業を継承した人々を対象に聞き取り調査を実施し、そらに商工会議所や農業会議所で保管されている記録文書を分析し、家族の存続戦略を考察する。 初年度にあたる13年度は、昭和40年代から30年以上にわたって家族(経営)協定を続けている農家の後継者について、自らのライフコース選択と自家農業の経営について聞き取り調査を実施した。その結果、たとえ近代的な法人経営を取り入れている農家でも、男子のあとつぎがていて、あとつぎとしての躾がなされ、あとつぎとしての結婚・出生行動がとられることによって、経営体の存続が可能になっていることが分かった。この分析結果について、11月に静岡県三ケ日町で行われた日本村落研究学会大会で「都市化地域における家族農業経営の存続戦略」として口頭発表した。 また、高崎市商工会議所の「商工名鑑」などから、高崎市の自営業者の変遷を確認し、古くから続く商家の経営者に聞き取り調査を実施し、各商家の歴史や家訓、経営者のライフコースなどを聴取している。これについては、次年度にさらに調査を進める。(686文字)
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