本年度の研究では、県内の滞日外国人コミュニティの存在を把握し質的に理解するために、カトリック教会、日本語教室、外国人集住地域、親睦団体を中心に約30ヶ所を訪問し、各コミュニティの概要を調べた。日本語教室は日本人主体に運営されているため、また多様な国の出身者が集うため、さらに集う目的が日本語習得に限定されているため、精神的あるいは文化的なサポートのやり取りはカトリック教会や親睦団体と比較すると少なかった。 エスニック・コミュニティの役割をさらに詳細に調べるため、フィリピン人の親睦団体、日系ペルー人を中心とするカトリック教会をベースとするコミュニティ、集住団地を中心とするベトナム人コミュニティについて、その発展の経緯、メンバー構成、活動内容などを調べるとともに、メンバーに対する各コミュニティのさまざまなサポートについて調べた。どのコミュニティも情緒的なサポートに加え、住居や仕事、子どもの教育に関する情報などをコミュニティを通して交換している。また、各国の文化的なイベントをコミュニティで共同で行うことにより、文化を共有している。こうしたコミュニティ内では一般的に経済的あるいは物質的なサポートは行われていない。しかし、ペルー人の親睦団体では医療保険の未加入者が多いため、イベントなどで店をだしたり、パーティなどを開催して会費を集め、メンバーが病気になった時のために備えるといった活動を始めている。また、カトリック教会を中心とするコミュニティでは、単にミサだけでなく、ホームシックや寂しさを皆で集まり解消し助けあうための自助組織が結成された。このように、各コミュニティは共通した特徴と独自の活動を行っていることがわかった。今後の課題としては、こうしたコミュニティの特徴が、文化的な差異、在留資格、在留期間、居住地域、人数といった変数のどれと関係しているかを分析することである。
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