今年度は、主として、平成9〜11年度科研費基盤(B)「学術研究に対する資金供給システムに関する基礎的調査研究」の中で得られた調査データの再分析を実施した。 学術研究成果について定量的な評価を実施するためには、発表形態や雑誌によって論文等の重要性が大きく異なるという現実に対処する必要がある。この問題に対処するため、本研究では、「外国の審査つき学術論文」や「国際学会での口頭発表」「大学の紀要等」に発表した研究論文、あるいは著書など学術的な研究成果の発表形態に応じた相対的評価ポイントについての問いに対する回答結果を中心とする分析を実施した。主たる結果は次の通りである。 1)人文社会分野と自然科学分野とを比較すると、研究成果の発表形態の選択や、それぞれの発表形態に対する評価の与え方は大きく異なっている。このことは、分野を越えた定量的評価の難しさを示す。2)評価を行う立場にある研究者は重点的かつ肯定的な評価観を有しており、研究者一般が持つ評価観とはかなり異なっていることが明らかになった。これは、評価対象によって共有されていない基準に基づいて評価が行われている可能性を示唆する。3)研究成果の発表形態をベースとする定量的評価の総合指標を作成したところ、分野を越えて共通する構造が抽出された。評価の水準はどの発表形態に対しても同様となっているというこの構造は、研究評価のあり方を考えるうえで出発点となるものである。4)人文社会は3タイプの評価パターン、理学では一元的な評価構造が存在していることが明らかになった。5)成果の客観的な測定可能性は全般的に低くなっており、同時に、発表に用いられる言語(英語/日本語)への評価と密接な関係が観察される。
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