日仏の高等教育進学者の学習経歴および様式の比較調査を行うに先立って、今年度は既存調査資料を用いて両国の学生文化の特徴を明らかにすることを試みた。両国の文部科学省が実施している全国学生生活調査の比較可能性を検討したほか、日本の社会階層と社会移動(SSM)全国調査データを利用しながら、高等教育学歴の者がいかなる種類の「文化資本」を身につけているかを分析した。 その結果、フランスでは学生生活の文化水準の違いのみならず、経済的条件がますます重要な問題になっていること、日本では学生生活条件が家庭の負担に依存している一方で、文化面では西洋近代文化のキャッチアップが卓越性の要因になっていることなどを明らかにした。これらの分析結果については、日本高等教育学会第4回大会(「フランスの学生文化における『経済問題』の拡大-1960年代以降の学生生活調査の再検討-」)、日仏教育学会2001年度研究大会(「日仏の学生生活調査-マス高等教育時代における問題構成・方法・内容の比較-」)、日本教育社会学会第53回大会(「キャッチアップ文化資本による再生産戦略-SSM調査結果からみた日本の『学歴階層形成』-」)にて研究発表を行い、『教育社会学研究』と『上越教育大学研究紀要』に論文を執筆した。 また、2002年1月には上越教育大学の学生302名を対象に、学習経歴と学生生活に関する質問紙予備調査を実施した。調査票は仏語に翻訳し、電子メールを通じてフランスでも同調査が実施可能か交渉を行っている。予備調査結果は現在分析中であるが、3月に報告書を作成し、その結果をもとに次年度の本調査に向けた準備を企画している。
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