平成14年度は、主な留学生受入国のマーケティング戦略・国際教育に関する資料収集を行うとともに、現地調査を計画・実施した。具体的には、(1)文献研究、(2)オーストラリアの留学生政策に関する最近の動向を中心とした現地調査、(3)アメリカ人留学生獲得を狙う各国のアメリカにおけるマーケティング戦略に関する現地調査を中心に研究をおこなった。 今年度の調査研究により明らかになった主な点は以下の通り。 (1)「Quality」の定義の変換を利用したことによる成功 かつて卓越性や優秀さを意味していた教育の「質」概念が、他方で「目的にかなっていること」=質の高さに変わりつつあることを有効に利用し、新しい大学が伝統的な大学にはない柔軟な特徴をスタッフやプログラムに盛り込むことで留学希望者のニーズに応える戦略をとることにより、国全体として留学生受入れ実績を伸ばすことに成功したと言える(アメリカ、イギリス、オーストラリア等)。 (2)高等教育機関が国際教育・留学生教育に対して抱く「ビジネス・マインド」の重要性 オーストラリア高等教育機関による外国人を対象とした教育は、経済性・効率性を重視した多様なプログラムを提供し、主要な貿易品目ともなっている。他方、オーストラリアの途上国開発協力活動の一環としての留学生教育についても、国からの補助金が削減された各大学は新たなビジネス・チャンスとして積極的に関与。 (3)国際教育をめぐる商業主義と留学生保護のためのシステム構築(オーストラリア) 教育の質に関する独立監視機関(AUQA/オーストラリア)や悪質な教育機関を罰する法的枠組み(ESOS/オーストラリア)の設置により、商業主義重視によって生じがちな負の要素の発生を防止するシステムを構築することにより、教育の質の維持と安全性を強調。オーストラリア以外でも教育機関に対し倫理綱領を設ける国が徐々に増加。 (4)留学生誘致活動を担う第3機関の重要性 ブリティッシュ・カウンシルやIDPなどの政府・大学以外の第3機関が外国での広報活動・コンサルテーションに果たす役割は大きく且つ重要。
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