研究概要 |
本年度の研究においては,現代アメリカにおける教育政策・少年司法政策・福祉政策の連携に関して理論的側面を中心とする検討および訪問調査等の準備の推進を予定し,次の通り概ね所期の目標を達成している。 第一に,前者の理論的側面を中心とする検討については,国内外から研究文献等について主たるものを収集することに努め,それらの解析作業を進めた結果,少年司法と教育との連携については矯正型ではなく予防型のプログラムが主流となっていること,そこでは暴力を元的に抑止する方式よりも非暴力紛争解決手段を自主学習する方式のちのが効果を上げていること,などが明らかになった。また,こうしたプログラムの実施主体として非営利団体の役割が高く位置づけられているばかりでなく,カリキュラムとの連動が図られる事例の存在も明らかになった。これらは,学校の新たな役割とその「社会的基盤」を解明する重要な手がかりとなる可能性があり,その詳細の解明を次年度の課題に加えたい。他方,福祉政策との連携については,近年,全米各地で設置され始めた「家庭資源センター(Family Resource Center)」と呼ばれるシステムがその機能を担いつつあるが,児童生徒の教育達成との関わりでの実質的効果については疑問視されていること,児童生徒や家庭のニーズが教育専門家によって決められ,ニーズの「自己定義権」が軽視されていることなどが明らかになった。 第二に,訪問調査については,当初調査を予定していたニューヨークが9月の事件によって訪問困難となったため,調査対象の変更を余儀なくされ,現在,他都市を選定中である。もう一つ予定していたシカゴについては,10月に予備訪問調査を実施して,シカゴ大学の研究者および教育NPOの調査担当者に対して学校改革の現状や政策連携課題に関するヒアリングを行うことができた。
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