本研究では、急激な大学改革の中で問われている大学の地域的機能に焦点を当て、特に大学-地域交流・連携に携わる人々の実態や志向性を通して、大学を中心として短大・高専まで含めた地域内での各種高等教育機関の関係構造を総合的に把握することを目的としている。 まず、昨年度に引き続いて、大学-地域交流・連携の実態とそこに関わっている人々の志向性を明らかにするために、当該対象となる高等教育機関、実際に高等教育機関との連携に携わっている行政・企業等地域側の諸組織、および近年増えつつある大学-地域交流・連携の「リエゾン機能」を果たしている組織に対してヒアリングをおこなっていった。また、高等教育機関の地域的機能に関する各種指標に関する分析も引き続いておこなった。ただし、これら調査自体が最終年度末まで続いたため、成果は今後逐次発表していくことにしている。 また、大学と地域社会をめぐる資料・文献収集として、欧州において資料調査をおこなった。日本では「生涯学習」や「産学連携」、あるいは若干ニュアンスは違うが若者の地域移動という個別の角度から論じられてきた大学の地域的機能ではあるが、国内外共に基本的にはまだ個別事例研究の蓄積段階であること、ただし国外では大学をめぐる受益者の視点から大学の地域的機能に関する研究が蓄積されていること(stakeholder approach)などが分かった。この成果については、来年度発刊予定である広島大学高等教育研究開発センター30周年記念レビュー論文誌上で発表することにしている。
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