本研究「研近代沖縄における民衆統合の歴史的過程〜沖縄型近代学校の諸相〜」は、「伝統」の擬制による近代化を果たした日本本土に対し、「伝統」を抑圧されながら、日本本土化(近代化)を迫られた近代沖縄における民衆統合の諸相を、その中心的機能を果たした機関と考えられる学校を中心に考究するものである。初年度にあたる本年度は史・資料の収集を中心とした研究をなした。沖縄近代史の基本文献に加え、離島地域の調査による史料収集も行った。 これまでの研究成果を結論的に言うならば、これまで沖縄における近代学校は、日本本土の価値や方針を一方的に鼓吹する統治機関として捉えられてきたが、その実態は必ずしもそうではないということが明らかになりつつある。沖縄の民衆が経た歴史過程は、基本的に「排除」と「包摂」の錯綜した状況であったということができるが、近代学校の諸相もまた同様であり、日本本土の価値を鼓吹する近代学校を否定する状況がある一方で、むしろそれを積極的に求めるような状況さえある。 来年度以降も引き続き、フィールド調査を進めるとともに、諸外国における民衆統治政策の状況も視野に入れながら、近代沖縄における民衆統治の歴史的過程について考究してゆきたい。
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