今年度は、本研究の基礎段階として、当該研究資料の収集および保育史・横浜プロテスタント史研究会等の関連研究会に出席し研究に対する方向性を常に明確にしつつ、以下のことを行った。 (1)先行研究の整理を通じて、幼保一元化の方向を模索しながらも、幼保二元化が明確となった1920年代の幼稚園令および1930年代の託児所令制定運動から、幼保一元化が困難であった要因を再検討した。(2)明治前期の教育・保育施設開設の時期において、それらが幼保一元化の理念および機会を内包しつつスタートしたことを検証した。(3)資料的に実証を困難にしていた明治前期の資料を、在米資料によって補い、わが国の幼稚園・保育所開設に影響を与えた19世紀アメリカの幼児教育・福祉運動について分析・検討し、それとの比較を進める中で、わが国の幼稚園・保育施設の特色と二元化の要因について考察をすすめた。なおこの課題については、現在継続検討中である。(4)明治期の幼稚園に成立・発展については、例えば、東京女子師範学校附属幼稚園、貧民幼稚園および簡易幼稚園奨励の問題、女子高等師範学校附属幼稚園分室の設置など、教育の「公」化が進む中で、幼稚園を公教育に取りこむ動きと福祉的側面を含んで中間的に位置付ける動きが見られ、幼保二元化へと進む重層的過程を明かにすることが必要であることが示唆された。また保育者養成に積極的であり、かつ早くから福祉的側面を強く打ち出し、わが国の幼稚園を設立したキリスト教系女学校および幼稚園の活動が、幼保二元化の問題とどのように関連するのか、経営面・幼稚園設備の充実と照らし合わせて検討することが必要であるという次の課題が明確となった。
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