1.1960年代以降のイギリスにおける高等教育政策について、特に二元的制度から一元的制度への推移、さらに一元的制度の影響について論じた政策文書、文献等を現地への渡航も含めて収集した。収集した文献等の整理・分析の結果、1960年代以降のイギリスでは大学に対する中央政府のコントロールが特に財政上の制度改革を通じて強まりつつあることが明らかとなった。中でも高等教育機関における研究・教育の質に対する関心が高まりつつあり、近年は教育水準に対する関心が特に高いことが明らかとなった。 2.高等教育に対する政策的な関心が高まった背景として、高等教育を新たな産業・経済を担いうる人材の供給源として位置づけている点があげられる。また、それまでの高等教育機関における研究・教育システムの持つ不透明性に対する批判の高まりがある。よって、今日では政府・納税者等に対する高い透明性が求められ、研究・教育における費用効果、学位の水準に対する品質保証が厳密に問われていることが明らかとなった。 3.また、大学制度の一元化の結果、旧来の非大学高等教育機関は伝統的大学と同じ基準によって評価され、特に補助金の配分において両者に大きな格差が生じていることが明らかとなった。制度的区分の解体に伴い、大学間のヒエラルキーがむしろ顕著な形となって、現れてきたとも言える。この点をより厳密に把握・分析するため数量的データの収集並びに整理を進めつつある。 4.今後の課題として、専門分野別に見た大学間の比較を研究・教育の両面から進める必要がある。この点を明らかにするために、数量的データの分析を通して、市場原理の導入をベースとしたイギリス高等教育の大衆化過程の特徴を明確にすることを目的として研究を展開する。
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