本年度は、研究計画に従った上で、(1)16名の小学校長に対するインタピュー調査、(2)20名の教員に対する自由回答記述調査、(3)約1200名の教員を対象としたアンケート調査を実施した。 小学校長に対するインタビュー調査は、校長のリーダーシップと学校組織特性の視座に立ち実施された。これは、アンケート調査による仮説検証の前段階として、具体的な理論枠組み及び仮説の構築を目的とするものであった。調査の結果、次の2点が明らかにされた。すなわち、第1は、学校組織の成員(校長及び教員)は、組織のパフォーマンスとして、児童の学力成果や協働性等の組織成果よりも、校長と教員、教員相互、教員と児童・保護者の間に形成される「信頼の文化」を強く意識していることである。第2は、「信頼の文化」を形成するためのリーダー行動として、これまで教育経営学領域において論じられてきた教育的リーダーシップや変革的リーダーシップに加え、組織内において公正性を維持しようとするリーダーシップを校長が発揮しようとしている点である。 そこで、「信頼の文化」を形成する具体的なリーダーシップの測定項目を構成することを目的として、20名の教員に対する自由回答記述調査を実施し、上記の枠組みに基づくアンケート調査を実施した。2002年2月に調査が実施されたため、現在は、分析結果を整理している最中である。しかしながら、校長の教育的・変革的・公正維持的なリーダーシップと「信頼の文化」とのポジティプな関係は認められている。今後は、学校組織における「信頼の文化」の水準と、上記リーダーシップ3次元との対応関係に基づいた、校長の人事配置における実践的な示唆を考察・提示する予定である。 なお、現時点では、インタピュー調査によって得られたデータをまとめ、学校組織における組織的公正の形成過程の実態についての研究論文を発表している。
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