研究概要 |
本研究では、ある小学校において通級指導教室と通常の学級との連携により試行されている「総合的な学習の時間」の授業実践を分析する。当該の授業は障害理解を主題とし、児童による体験学習と報告及び討論を重視するものである。試行を通し、多学年にわたって重層的に展開される授業構築を目指している。この授業の分析を通して、(1)障害理解に関して、どのような指導内容が適切であるか、(2)指導案作成や授業展開における通級指導教室の教員と通常の学級の教員との連携のあり方等について明らかにする。 資料収集対象は、A小学校の第3学年から第6学年まで各学年2学級全8学級であった。このうち第3,4学年は聴覚障害体験を、第5学年は車いす体験を、第6学年は高齢者体験を題材とした。研究代表者も授業者としてそれぞれの授業に参加しながら授業分析を行ってきた。研究初年度である今年度の分析からは以下のことがわかった。 障害の体験学習は児童たちにとって意欲的に取り組めるものであった。体験学習で感じた不自由さ、不便さを体験し、報告することができた。しかし、それは疑似体験であって、障害のある人が感じている不自由さは一様ではないことには気づいていなかった。また、疑似体験だけでは「障害のある人イコールかわいそうな人」という印象を持ちかねない状況にもなった。これらの解決には障害のある人の話を聞き、質問をするという経験が有効であった。 指導案は通級指導教室の教員と研究代表者が主に作成した。しかし、授業では、保護者に協力や参観を求めたり、商店街を車いすで調査したりするなど、学級の実態に応じながら、通常の学級の教員それぞれの個性や力量が発揮された。本実践においては、障害に関する知見を提供する通級指導教室教員と、各学級の実態に即した授業展開ができる通常の学級の教員との連携は重要であった。
|