近年、我が国おいて新規学卒者の就職難が問題視され、いわゆる学卒無業者層の増加をめぐって多数の実証分析が蓄積されつつある。国際的にみても異例な、学校から職業への「間断のない移行」の達成を可能にしたとされる、従来の学卒就職の仕組みが機能し得なくなったことが指摘されている。本研究では日本における高校卒業予定者の進路に関する調査の分析を行うとともに、若年層とりわけ非高等教育学歴者に対する職業への移行支援について、積極的な政策を導入してきた米国の事例について文献調査を行った。特に本研究では、School to Work Opportunity Act(1994年、2001年までの時限立法)、および1998年に改正されたCarl D.Perkins Vocational and Technical Education Actに注目し、同法の内容および適用事例等に関する文献の収集、さらに同法を適用した事例についての政策評価に関する報告書等の収集・検討を行った。導入からの期間が短いこともあり短期的な視点からの評価に限定されているが、特に前者については、望ましい職業への移行、学業成績の向上等に対して良好な効果を上げていることが確認された。また、両法の目的の一部として、学術(academic)教育と職業教育の統合、中等教育と中等後教育のリンケージの強化、学校と地域・雇用者の連携が共通して掲げられていることから、中等後教育機関(特にプロプライアタリースクール)における職業教育の実態、およびその就業状況に対する効果等についてもレビューを行なった。現在、以上の先行研究の成果と、日本で行った調査の分析結果の比較可能性を検討しているところである。米国における上記の政策は、日本の高校における就職指導が従来、果たしてきた機能を政策的に創出しようとする側面を有するのに対して、現在、我が国の高校においてはむしろ米国のそれに逆行する現象が生じおり、両国の当該分野における歴史的経緯等も踏まえた、さらなる比較分析が必要とされる。
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