本年度は国内・ロシア双方で、受入れ国である日本と労働者を送り出す側であるロシアの双方の実態に関する、基礎調査を行なった。 1.国内(小樽・函館)調査:北海道内で比較的古くからロシア人との交流がある2都市において、在住ロシア人に対する行政レベルでの取り組みを探るとともに、インタビューを試みた。小樽市役所・函館市役所の協力を得て上記の資料を収集した他、外国人労働者全体に対するロシア人の傾向、現在顕在化している問題点等を調査した。今後は公衆浴場問題等を含め、各市が抱えている問題点を明らかにしたい。インタビューについては、予め予想はしていたが、一般的な話を除き個々の事情を聞くことはあまりできなかった。 国外(ロシア共和国沿海州地方)調査:特に日本での労働に関する資料を収集した。1)極東における日本との協働に関する文献・統計資料の収集を行い、さらに2)ロシア人の海外労働に関する法律を収集した。また、極東大学等の協力を得て、3)日本企業での労働経験者へのインタビューを行なった。また、4)在外商社等の職員からは、日本人にとってのロシア人との文化摩擦、特に労働上の問題と各解決のための努力等についてインタビューを行なった。 上記の調査の結果、現在ロシア特に極東において、隣人である日本人に対する感情は比較的良く、日本企業及び日本人一般への期待が大きいのに比して、ロシアとの協働経験者(あるいは雇用者)である日本人の意見は非常に厳しいものがある事がわかった。この齟齬の要因としては、社会主義国家で培われた労働観、特に問題解決場面の行動様式の相違等が挙げられ、これらは歴史的・文化的相違に起因する部分が大きいと考えられる。来年度の課題として、両者の齟齬をより明確化するとともに、ロシア人労働者の日本での行動様式を調査し、その特徴に関しても調査したい。
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