本研究は、北海道南西沖地震によって被害を受けた奥尻島で、奥尻島が培ってきた民俗事例にどのような揺れ動きが生じたのか、また、どのように文化再活性化がなされたのかを具体的に明らかにし、北海道南西沖地震が奥尻島の文化に与えた影響について考察しようとするものである。 そのため、第1に、奥尻島の民俗の歴史を把握するために、奥尻町の教育委員会の協力を得て、古老から奥尻島各地区の民俗事例について聞き取り調査するとともに、奥尻島のここ100年間の生活史を描いた古写真の発掘に力を入れた。 第2に、賽の河原祭り、室津島神社例祭、青苗言代主神社例祭、奥津神社例祭などの年中行事について、現在の状況を調査し、記録した。また、北海道南西沖地震前と後では、それらの行事にどのような揺れ動きがあったのか、聞き取り調査を行い、記録した。 第3に、奥尻島内各地における有形文化財の流出状況についての調査を行なった。特に被害の強かった青苗地区、稲穂地区では多くの文化財が流出したことが明らかとなった。さらに、流出した文化財のなかで、現段階で復活したもの、以前復活していないものについての整理を行った。本年度は、青苗地区、稲穂地区ともに、御輿が復活した年度でもあった。 また、上記の奥尻島の事例をより客観的に分析するために、日本列島における歴史災害と文化との関係についてのデータを収集し、比較材料として、データベース化した。 なお、奥尻島に残存する古写真については、北海道開拓記念館発行の出版物で発表した。その他調査したデータについては、学会及び学会誌などにおいて発表すべく、現在準備を進めているところである。
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