研究概要 |
本年度は,「研究実施計画」に沿って,(1)関連文献の収集と,(2)一次史料の収集に重点を置いた。 (1)については,神風連の乱(以下,「乱」と略記)を主題とした,主に明治以来の文献類を古書籍として購入した。これらの諸資料から「乱」に対する見方・評価の変化を読み取ることが可能になるが、この課題は,所属する大学の講義等を利用して,来年度に集中的に検討していきたい。 (2)については,「乱」研究の基本的史料となる熊本県庁文書中の関連文書を中心に,一次史料の撮影・焼付を大量に行った。中でも,「乱」参加者に大きな影響を及ぼした神道思想の内実を明らかにすることができる,神官の日記(長野阿蘇神杜の神官である「長野内匠日記」)を,写真で収集できたことは貴重な成果であった。その他,神宮文庫(三重県伊勢市)所蔵の三条家文書からは,「乱」に関わるこれまでに全く知られていない史料を見いだすことができた。 これらの研究活動の成果の一端として,「散髪令考」を執筆した。これは「乱」の直接的原因の一つに数えられてきた散髪令を,近世から近代への移行期政治過程の中に位置付けようとしたものであり,先述した古書籍類や熊本県庁文書中の諸史料を駆使して執筆したものである。このテーマについては,論文の構想を京都大学人文科学研究所において発表した際に,研究会参加者からいただいた示唆に基づいて,現在,続稿を準備中であり,「乱」に連なるもう一つの法令=帯刀禁止令とともに,今後,その分析を大いに深めていきたいと考えている。
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