1.王家・摂関家と守護・地頭などとの交流に関する史料の収集、および史料の概観 (1)まず公家側の史料の収集について述べる。刊本を用いて翻刻史料を収集するとともに、史料所蔵機関に出張するなどして未翻刻史料を調査した。権門自身の側に残った史料としては、摂関家の旧蔵史料に注目しその目録などを調査した。また権門の院司・家司の家柄の公家のうち、西園寺家・広橋家は比較的多くの古記録を残した家であるため、それらの家の日記の概要を調べ、一部を写真で収集した。そして公家権門と密接な関係をもつ興福寺一乗院などの寺院文書を調査し、そのなかに含まれる権門所領関係文書を収集した。 (2)次に武家側の史料の収集についてであるが、本年度は翻刻史料からの収集が主であった。守護家の文書としては大友文書を調べ、そのなかから権門所領に関わるものを収集した。地頭やその他の在地領主の文書の収集にあたっては、まずどの家の文書に関連史料が含まれるかを確定する必要があり、本年度はその作業を進めた。 (3)現在までの収集史料の整理および内容読解によると、権門所領における武士の動向は、所領荘園をめぐり権門と対決する訴訟の事例のほか、当該荘園と近隣荘園との間でおこる紛争の事例などから知ることができる。 2.本研究の素材とするに適切な公家権門の選定 摂関家の近衛家や九条家は、その所領についての史料が公家側・武家側双方に残っており、次年度の研究でより詳細な検討を加える。一方、王家の場合、一荘園群の所有者が必ずしも一つの権門に対応しているわけではないため、荘園群に名前を冠せられている女院や御願寺だけではなく、それを相続した権門も検討対象となり得る。王家領荘園群で、且つ武家側の史料が残っている荘園を含むものとしては、蓮華王院領などが挙げられる。
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