平成13年度から2年間にわたる研究の初年度。本年度は、補助金申請時にすでに半分の石造物を調査した段階で中断していた北陸の資料(福井県敦賀市教育委員会には申請済み)について現地調査を完了し、あわせて京都の石造物の予備調査・本調査を行う予定こととした。前者については予備調査(平成13年11月25日)天候その他の理由により本調査の調整がつかず、後者を優先させて行うことにした。 具体的には、京都に所在する日蓮宗系諸本山墓地の石造物を調査し、中近世移行期の京都における墓地のあり方の基礎資料を構築した。予備調査は平成13年10月27日に、本調査の1回目は平成13年11月16から18日に妙覚寺でおこない、161点の石造物を調査した。本調査の2回目は平成14年3月14から17日に妙蓮寺、妙顕寺でおこない、約224点の石造物を調査した。調査は各無縁石造物について法量測定・写真撮影・拓本採取等を行い、石造物に記されている金石資料(紀年銘等)の構築を最優先した。これは本研究が、非文献資料を利用した基礎的研究であることに基づいている。 本調査第1回目を行った、妙覚寺墓地については無縁石造物群については分析が終了しており、様式的には一石五輪塔・板碑型・笠塔婆身部・その他の石造物を検出し、永正十六年から天文・永禄・元亀・天正・文禄の各時代で約50点、加えて、慶長・元和・寛永期のものが約50点の存在が明らかとなった。全体の3分の2以上が年号を明らかにしうる紀年銘を持つ点で、中近世移行期の京都市中墓地資料として有益なデータを提供すると考えている。
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