朝鮮華僑史研究のための基礎的文献調査 19世紀後半から20世紀初頭の東アジア地域では西欧の国際関係や国際秩序とは異なる地域内の独自の交流と交易活動が活発に行われていた。この域内交流を代表するものが朝貢貿易を中心とする東アジア諸国のネットワーク的なつながりであることは言うまでもなかろう。しかし、従来の先行研究では「東アジア広域圏」という大きな分析フレームを設定はするものの、その中心は日・中間の比較研究であり、朝鮮の開港「場」と朝鮮華僑という「人的」交流部分に関する研究成果は極めて少ないのが現状である。本研究はこのように先行研究の少ない朝鮮の開港「場」と朝鮮華僑史研究を今後、本格的に推進するために必要な基本的資料の調査を目指すものである。 平成13年度の調査は、朝鮮華僑史関連の基礎資料を収集する第一歩として(A)日本側の資料調査を実施した。とくに、明治維新以後日本の外務省、商務省、警察などの官僚によって朝鮮商業事情調査が実施され、そのなかに華僑に関する様々な報告が含まれていることを確認し、その資料の一部を収集することができた。例えば、(1)朝鮮が植民地になる前の段階で実施された領事報告(仁川領事報告、釜山領事報告、京城領事報告)、(2)日韓併合直後の清国商人の法的地位問題-犯罪清国人の処分の管轄権、(3)清国公使館の廃止のかわりに総領事館を設置する問題、(4)植民地時期(1910年〜1945)の華僑教育・商業問題、(5)満州事変に伴う中国人の国籍待遇問題(中華民国籍と満州国籍)など幅広い範囲の資料を収集することができた。平成14年度は台湾(中華民国)と韓国が所蔵する華僑関連資料の収集を実施したい。
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