平成13年度の研究は、その中心であったブラック・パンサー党の党員リユニオン・パーティが延期されたため、予定のものを大きく変更せざるを得なかった。件のリユニオンは昨年10月14/15日にワシントンD・Cで開催される予定であったのだが、9月11日の連続多発テロ事件の直接的影響を受けた。そうといいうのも、調査対象となっている団体は、60年代後半に「国家公安の最大の敵」の「テロ集団」と呼ばれ、FBIによって非合法な手段によって弾圧された団体であったからである。 そこで急遽リサーチの対象を変更し、リユニオンの組織委員会と連絡をとり、ワシントンD・C地区周辺--ボルチモア・リッチモンド、コロンビア特別区--に居住している旧メンバーに個別に会い、インタビューを行ってきた。平成14年度4月に再度開催予定のリユニオンでの史料蒐集と併せ、その成果を同年度の歴史学研究会全国大会現代史部会で発表する予定である。 さらに一橋大学図書館所蔵の文書、ブラック・パンサー党と同じく黒人団体の急進派に属し、ブラック・パワー運動の中心になった団体、人種平等会議文書のマイクロフィルムの複製を制作し、ブラック・パワー運動総体として多様な団体の分節化を試みている。そこで、マルクス=レーニン主義や毛沢東主義を標榜したブラック・パンサー党と比較するならば、同団体には反体制・左翼的傾向はみられないことが判明。これは平成14年度実施予定の学生非暴力調整委員会文書(同じく一橋大学所蔵)のリサーチ結果とともに、論文として発表する。 なお、ブラック・パンサー党結成以前のブラック・パワー運動に関する論考は、「シカゴ・フリーダム・ムーヴメント〜転換期のプラック・アメリカと<人種>の再構築」と題した論文で『歴史学研究』に発表した。
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