本研究では、近代イギリスにおにる公共政策の実践過程に迫るために、救貧社と呼ばれる半官半民的な組織を具体的な研究対象としている。救貧社は、18世紀はじめ以来、地方都市を中心に複数の地域設立され、地域エリートを中心に幅広い社会福祉活動を実践した機関である。救貧社が地域社会の中でとくに大きな役割を果たしたのは18世紀から19世紀にかけてであるが、このうち18世紀後半以降の救貧社の活動については相対的に研究が手薄である。本年度は、この時期の救貧社の活動実態を解明することに取り組んだ。 本年度の研究実績は、1.資料(史料)の収集と2.成果の公表に分けることが出来る。 1.資料(史料)の収集 (1)日本国内 ・二次文献の調査収集:ウェッブ夫妻による近代イギリスの地方行政に関する古典的な研究書をはじめ、関連する文献を収集し研究の基礎的な条件を整えることに取り組んだ。 ・東京大学図書館他に所蔵されているイギリス議会文書にくわえ、パンフレット類などの一次史料の収集をすすめた。 (2)イギリス ・夏期に実施した約一ヶ月間のイギリス滞在中に、国内では入手が困難な文献・史料の収集に努めた。当初の予定をややこえて、スコットランド国立文書館所蔵の史料を収集することが出来たのは大きな成果であった。 2.成果の公表 (1)口頭報告:日本西洋史学会第51回大会(2001年5月12・13日) 小シンポジウムI「ヨーロッパの政治社会-長い18世紀の連合王国-」 報告タイトル「地域政治のダイナミズム」 (2)共著『長い18世紀のイギリス その政治社会』(山川出版社、2002年) 執筆担当 第二章 地域社会のダイナミズム 以上のように、本年度は一定の研究実績をあげることが出来た。反省点は、学内業務多忙のために、国内における資料収集と分析が、当初予定していた地点まで到達できなかった点である。これについては、次年度以降に持ち越さざるをえなかった。
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