本研究は、近代イギリスにおける公共政策の実践過程に迫るために、救貧社と呼ばれる半官半民の組織を具体的な研究対象としている。救貧社は17世紀以降、地方都市を中心に数十カ所に設立された。救貧社は地域エリートによって運営され、幅広く地域の社会福祉活動を実践していた。これらの組織のいくつかは18世紀中のみならず19世紀に至ってもその活動を継続し、地域レヴェルでの公共政策の実践を支え続けた。救貧社の活動については、これまでのところ18世紀後半以降についての研究が手薄であり、本研究は特にこの時期の救貧社の活動実態を解明することに取り組んだ。事例として、史料の残存状況がよいという理由でイングランド南西部の主教座都市エクセタの場合を取り上げた。 本年度の研究実績は、1.資料(史料)の収集(a.夏期に実施したイギリスでの調査を通じて末端の行政組織(教区会)にかかわる史料を収集 b.国内のマイクロフィルム史料の分析)、2.成果の公表(雑誌論文の発表:19世紀初頭のエクセタ救貧社の活動実態を解明)、3.展望の提示(東京と仙台で開催された研究会における口頭報告とその後の討論:19世紀半ば以降の救貧社の活動と都市の行政改革との関係を検討)に分けることが出来る。 上記のように、昨年度来の研究を引き継いで研究実績をあげるとともに、来年度以降に向けて一定の方向性を提示することが出来た。成果の公表が当初予定していたよりもやや遅れている点に問題があるものの、調査については過去2年間に予定していたものをほぼ完了した。これを受けた分析と成果の公表、並びに19世紀半ば以降の状況の解明は、課題として来年度以降に持ち越されている。
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