本年度は、百済の対外交渉を考察するための考古資料、特に新出資料の実態を明らかにするため、海外および国内出張をおこない、資料収集と実見調査をおこなった。海外出張は、研究費を用いて平成13年7月5日〜11日、国立公州博物館・公州大学校博物館・ハンシン大学校博物館・国立中央博物館・国立文化財研究所を訪問し、李南〓・李南珪・権五栄・金武重・金吉植・金洛中の諸先生から、最近の研究動向についてのレビューを受け、意見交換をおこなった。今回の主な成果は次の通りである。(1)風納土城出土品の検討により、漢城百済の早い段階から、大量の中国製陶磁器類が持ち込まれており、加耶や倭との関係を示唆する資料も出土していることを確認した。(2)京畿道南部で最近調査例が急増している漢城百済遺跡からも、中国製陶磁器類が出土する場合が少なくないことを確認した(3)国立公州博物館でおこなわれた武寧王陵発見30周年記念特別展および国際シンポジウムを通し、熊津百済期の対外交渉の実態を示す考古資料の再検討をおこなった。なお、今回の出張に関連して国立公州博物館からの要請を受け、武寧王陵出土木棺材が日本特産のコウヤマキであることに関する問題についての論文を執筆した。 国内での調査は、研究費およびその他の機会を用いて、長野県・大阪府・京都府・奈良県・滋賀県・佐賀県での関係資料の実見調査をおこなった。特に12月には、10日間、国立公州博物館の日本所在百済文化財調査に協力して、日韓でのコウヤマキ材の利用状況を比較検討実見調査を進めた。また、植民地時代の調査研究成果が多く含まれている東洋文庫所蔵の梅原考古資料、埼玉県立歴史博物館所蔵の宮川コレクションの検討を行い、新資料の確認をおこなった。
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