縄文・弥生移行期に、日本列島で初期農耕文化が成立する過程で、縄文系の石製呪術具はどのような役割を担っていたのか。その様相を明らかにするため、平成13年度は、すでに集成作業の終わっている西日本に引き続いて、東日本での呪的遺物の基礎的な集成作業を中心におこなった。対象とした地域は、東海・北陸・中部・関東で中心的に行い、そして補足的に西日本の資料についても岡山県などで行った。研究上重要な遺跡の資料については、観察・図化作業を行った。さらに、本年度中には、岡山県などで、本研究に関連した重要遺跡で実際に調査が進行中であったため、調査を担当する機関に協力を依頼し、補助的に呪術具の出土状況等の調査分析を行った。以上の研究を進めつつ、縄文・弥生移行期における総合的な分析、特に土偶などとの関係について、個別的・総合的にそれぞれ考察をおこなった。その結果、石製呪術具は土偶と同様に、縄文文化の精神文化的側面において重要な機能を果たし、中期末以降、自然環境の変化や大陸からの新しい文化の流入による動揺などに対処する際に、社会の調整的な機能をもっていたことがあらためて判明した。そして、呪術具が役割を果たさなくなったとき、縄文文化は終焉を迎えることも呪術具の状況から確認できた。今後は、東日本を含めた広域な変動の状況を、南島やアジア全体の枠組みの中で検討したい。 なお集成した資料は、デジタルカメラにより画像として保存し、より広汎な活用を考慮し、すべてデジタル・データにして、配布可能な画像データーベースを構築中である。
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